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 今野保さんをご存じの方は、多分いらっしゃらないと思います。

 氏は1917年に北海道内で生まれ、お父さんが製炭業を営んでいたこともあり、少年時代を日高管内で過ごしました。

 その頃に経験した、静内川上流での泊まりがけの釣行では
たとえば蛇が木の枝から魚を狙い、その蛇を食べようと魚が代わる代わる蛇に跳びかかる対決を、主人公が息きを詰めて見つめたことや、川の縁に造られた山小屋で寝ていたら、雨で急激に増水し山小屋が流されそうになったこと。そして真っ暗な中を避難し、岩の上で仮眠し気づいたら、その岩は絶壁の上だったこと。また、誤って崖から急流へ転落しそうになったことなど、様々な体験を「秘境釣行記」と言う小説にされました。
 当時の静内川は水量も豊富で、油断をすると流される危険や、山奥の原生林には羆が生息し何時出会っても不思議ではないものの、一方魚影は濃く、大物が川の淵に潜んでいたり、時には鮭が遡上してきます。命の危険はあるものの、ある意味で良い時代の良い思い出を、小説の中で経験させていただきました。感謝です。

 もう一つの小説が羆吼ゆる山」です。
 これもやはり、氏の実体験から書かれたものです。
 牧場の馬が羆に襲われて押さえ込まれ、身動きが出来なくなったとき、雄牛が羆に敢然と立ち向かい、角で羆の脇腹を突き破って馬を助けた出来事。
 舞茸を採りに出かけたら崖の下から自分達の方へ向かってくる羆を見つけ、近くの岩を羆に向かって転がし、追い払ったこと

 馬の死体を食べにくる羆を樹上で待ち伏せし、猟銃で狙撃したこと。
 アイヌの漁師と羆の不思議なふれあい。そして突発的な出来事をきっかけに襲ってくる羆を瞬間的に狙撃する漁師。

 自分の冬眠場所を奪われた羆が、思いがけない場所で冬眠したため、知らずに近づいたアイヌ漁師との間で起こった死闘。漁師はナイフ1本で立ち向かい、激闘の末なんとか羆を仕留めることが出来た話。
 また、増水した川を渡ろうとした少女が橋と一緒に流され、短い命を奪われてしまう話など、氏の体験や、氏の周りでの出来事。さらにはアイヌの漁師が話してくれた出来事などを織り交ぜ、物語が展開していきます。

 こちらの本も、自然の厳しさを感じつつも大自然の魅力を十分官能できる、秀逸の一冊だと思います。
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