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 篠田節子さんの小説は、まか不思議な世界です。ホラーなのか、SFなのかよく分かりません。
 一種独特の趣があり、読みながらちょっとだけ恐ろしくされ、しかしやっぱり楽しませていただける。なかなか味のある作者さんだと思います。

○ 私が篠田さんの本を一番最初に読んだのは「夏の災厄」です。
 
東京近郊のベッドタウンで突如日本脳炎が発生。ほぼ撲滅されたとされる病気がなぜ今頃に? しかもその症状は,従来知られていた日本脳炎よりはるかに発症率,致死率が高い。後手後手に回る行政,住民はパニックに襲われる・・・
 この本では、篠田さんの書かれる小説がホラーだとかSFだとかとは思わなかった。ただ、現実に存在しない病気をテーマにしていたのでちょっとだけ「SF的?」って感じでした。
 題材的には、篠田さんが元市役所職員で、しかも福祉関係の仕事に携わっていたことも関係し書かれたと邪推していました。ちょっと的外れかも?
 ただ物語のテンポが良く、話題にも深みがあり、存分に楽しませていただけました。


○ 次に読んだのが
「アクアリウム」ですが、これは間違いなくSFでありホラーです。
 主人公は親友の恋人にたのまれ、湖でダイビング中に死んだ親友の遺体を引き揚げに行き、謎の生き物と出会います。その生き物は人の心を読み、その人が望む存在になりきってしまいます。言葉で話しかけなくても相手に気持ちが伝わり、そして相手の気持ちが自分に伝わってきます。そのような交流を何度も繰り返す内に、その生き物は恋人のような存在となり…。折しも、その湖近辺で土地開発が始まったことから湖の環境が破壊されつつあり、その生き物の生存が危険にさらされます。そして主人公は、その生き物を守るため、自分の人生を投げ捨ててでも土地開発を阻止しようと…

 作者はこの物語の結末を書いていませんが、このように、破滅を予感させつつ物語が終わってしまう手法は北方謙三さんを連想してしまいます。


○ 次の
「絹の変容」も間違いなくSFでありホラーです。

 偶然発見した、不思議な糸を吐く野蚕から取れる絹で作られた織物は、レーザーディスクのように輝く。この野蚕をバイオ・テクノロジーによって繁殖させ、一儲けしようと企てたが、その絹は人体に多大な影響を与えることが判明。さらに野蚕は凶暴化し、人間を襲う!!

 ちょっと恐ろしくもあり、そしてちょっと気持ち悪くもあり、ある意味、よく思いついたと感心してしまいますが、次々と展開して行く物語はやっぱり「面白い」の一言です。


○ 次にご紹介するのは
「ハルモニア」です。
 この本は、ホラーではないと思います(人によっては、やっぱりホラーと解釈するかも?)。でもやっぱり異種独特の世界です。

 主人公は、障害者施設からの依頼を受け、脳に障害をもつ少女へのチェロ指導をします。少女は子どもの頃に受けた手術のため,言語による認識能力,コミュニケーション能力を失っていますが、主人公の指導により凄まじいスピードで上達し、類い希な才能を発揮し始めます。だが、「それは才能ではなく、人の真似」と気づいた主人公は、なんとか自分の表現をさせようと苦悩し…。

○ 最後にご紹介するのは
「女たちのジハード」です。
 この小説はホラーともSFともまったく無縁です。様々な性格を持つ5人に女性が、男性優位社会の中で、踏まれても虐げられても逞しく人生を切り開いて行きます。


 康子は、自分の城を持とうと競売物件のマンションを調べます。しかしそのマンションでの儲けをたくらむ暴力団は、康子へ様々な妨害を仕掛けますが…。

 ほかには、美人で仕事も家事もでき、男性社員には人気絶大だけど女性社員には反感をもたれるリサや、仕事も家事もできないけど、早々と結婚することができた紀子。有能ながら左遷させられるみどり。英語能力を生かして転職を考える沙織たちの悲喜こもごもの物語です。

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